「あなたらしさを支えるPD」
わが国で腹膜透析が始められて30年余りが経過し、日本腹膜透析医学会は20周年の記念大会を迎えます。末期腎不全治療の焦点が救命からQOLの向上に移行し、透析患者の高齢化を背景に、腎代替療法によってその人の人生をいかに支えて行くのかを考える時代になりました。
この30年間に私たちは腹膜透析の多くのことを学びました。血液透析と優劣を競う構図は、透析不足を背景にして被嚢性腹膜硬化症の悲劇を生みました。この経験から腹膜透析における残存腎機能の重要性が明らかになり、腹膜を酷使せず腹膜透析本来の持続的治療の良さを活かす透析液や併用療法が生まれました。腹膜透析治療は残存腎機能に支えられながら、早期の腎代替療法としてあるいはエンドオブライフケアとして、腎不全患者の在宅治療を支える治療として再認識されています。
腹膜透析の現場は血液透析と比較して、看護師やMSW、在宅診療スタッフなどコメディカルスタッフが積極的に活躍する場です。その理由はやはり腹膜透析治療が在宅治療であり、まさに患者の生活と共にあるからでしょう。生活の中にある患者の人生にふれて、私たち医療者は磨かれていくのであり、腹膜透析は医療者のよき人材育成の場でもあるとも言えるでしょう。
このように30年の歳月を経て定着してきたわが国の腹膜透析医療の特色を、節目となる第20回日本腹膜透析医学会のテーマに据えて、「あなたらしさを支えるPD~それを支える人材育成~」と表現しました。わが国の腹膜透析の歴史から確かな学びを得て、将来のわが国おける腹膜透析のあり方を皆さんと一緒に考えたいと思います。多くの皆様のご参加をお待ちしています。